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読むめし

口で咀嚼するたけでは足りず、観念でも食べ物を愛でようとする人間

18きっぷで静岡の旅 富士市吉原の、つけナポリタンは成功しすぎたのか?

お店 外食 地理

つけナポリタン?

トマトのつけ汁にスパゲッティをつけるんでしょ?
わざわざ食べに行くようなものなの?
 
という疑問は、写真で終止符を打ちました。
麺をつけて上げたときに、まとわりついて糸を引くチーズと濃厚なトマトスープのビジュアルにやられました。
 
つけナポリタン発祥の地は、東海道五十三次の14番目の宿場町・吉原(富士市)にあり、実はその吉原の商店街まで行くには電車を乗り換えなければなりません。
それでも行こうと思いました。
 
JR吉原駅のホームに降りると、すぐ隣りに岳南鉄道のホームが見えます。

 

https://instagram.com/p/7cmeeNmJJD/

線路の上を渡って岳南鉄道の改札に行くと、昔ながらの切符を切ってくれます。Suicaは使えません。

ホームで待っていると、1両編成の電車がやって来ました。

 

https://instagram.com/p/7cnRXomJJ9/

 

レトロ感満載です。吉原駅から吉原本町まで2駅で210円ですが、レトロ的なアトラクションとして楽しめます。

 

吉原本町で電車を降りると、そこそこ長い商店街があり、それが「つけナポリタン発祥の地」です。

なぜそのような場所にあるかというと、東海道五十三次の宿がこの吉原本町商店街の場所にあったからなんですね。

江戸時代の初期は海に近いJR吉原駅付近だったのですが、津波で内陸に移り、そこでもまた津波が来て、より内陸にある今の場所に落ち着いたということです。

現在は、街の造りは明るいけれども、正直静かな商店街になっています。

 

https://instagram.com/p/7cngmHGJKV/

 

我々が目指したのは、元祖つけナポリタンのお店「アドニス」です。
 
この喫茶店の店主と、テレビ番組の企画がタイアップして、商店街復興に向けた商品を開発したのだそうです。
 
それが2008年のことなので、それほど昔ではないのですが、今やすっかり地域に定着しています。
これは、商品開発力と構想力の賜物だと思います。
というのも、つけナポリタンの定義は「麺とスープを別々にし、スープはトマトをベースに他の味を加えたWスープ」で、トマト以外の味やトッピング、麺の種類は自由となっているため、各店の個性が発揮できるようになっているのです。これならば各店に創造の余地があるうえに、観光客は複数の店でバリエーションを楽しめる訳です。
 

https://instagram.com/p/7c8PkbGJNy/

アドニスは10:00開店ですが、つけナポリタンは11:30からと言われ、その時点で11:15頃だったので待つことにします。

我々が店内に入ったときは先客は1組だけだったのですが、あとから次々に入ってきて11:30頃にはほぼ満席になりました。
そして、実に9割の人がつけナポリタンを注文しました。ここから我々はお店の悩みを垣間見ることになります。
 
「つけナポリタンは一度に6食しか作れませんのでお待ちいただく場合があります」
「状況により、麺のおかわりをお断りすることがあります」
 
お店は元々街角の喫茶店のようで、30席ほどの規模です。
満杯の客のほとんどが同じメニューを注文するようになるとは予想していなかったのでしょう。
それに、つけナポリタンは具だくさんで、だいぶ丁寧な作りです。
 
苦悩の跡は、メニュー表の価格にも表れていました。
1100円を手書きで1150円に直していました。
値上げが分かるように直すって、なかなか無いことですよね。
 
さて、実食のレポートに移りましょう。

 

https://instagram.com/p/7cmCDkmJIZ/

(上の写真で、真ん中の小皿は取り分け用です。お店の人、かたじけない)

 

https://instagram.com/p/7cmFPfmJIe/

トマトベースのスープの中に、茹で卵、大きな鶏胸肉、マッシュルーム、青梗菜と、たっぷりとろけるチーズが入っています。

たっぷりとろけるチーズが濃厚に麺に絡んで上がってくる、かつて世界にこんな料理があったでしょうか。

って、チーズの伸びをうまく写真に収められなくてすみません。

 

https://instagram.com/p/7cmMoEmJIr/

身悶えするチーズの量でした。隠れているけれど、相当です。

そして、なんと麺が、麺だけでも美味しい。

 

https://instagram.com/p/7cmJK3mJIn/

太めで四角っぽい生麺に、桜えびを炒めたオイルを絡めた感じです。

桜えびの香ばしい塩味とオイルのコク、そして歯ごたえのある麺が相まって、これだけでもしっかり一品になれます。

一度に6食しか作れず、お店は満席で、しかも我々は沼津で柱状のかき揚げ丼を食べた後であり、この後も未知の食べ物のために胃を空けておかなければならない、そのような客観的な事実は全て「おかわりしない」という結論に行き着くのに、

麺おかわりしたい!

と主観が強く主張して、あわや客観的状況をねじ伏せるほど美味しかったです。

何とか踏みとどまりましたけれども。

 

https://instagram.com/p/7cmP1BmJIv/

アドニスは、カレーやピザ、グラタンなど昔ながらの洋食メニューとコーヒー・ケーキが中心の喫茶店だったのだと思います。

そして、それら昔ながらの洋食メニューも断じて時が止まっている訳ではなく、形態は洋食でありながら、味を常に進化させるべく研鑽を積んでいる。そこから生まれたのが、つけナポリタンなのだ。

と私は思いました。

他の料理食べてないけど。

次回来たら、つけナポリタンの他に料理を何品か頼むことが、お店にとっても自分達にとっても良いことだろうと想像しています。

 

商店街振興のために開発したメニューがヒットしすぎて店のオペレーションを一変させてしまったけれど、商店街はアイデンティティを確立し、全国区になりつつあります。

それは、本当に美味しいものを作ったからです。

 

お店の外観の写真を撮っていたら、通りを歩いていたスナックのママさん風のお母さんに話しかけられました。

「ここねえ、道のこっちに行くと富士山が綺麗に見えるのよ。あら、今日は曇っていて見えないわね。晴れているとね、とても綺麗なの」

観光客が出現し始めた商店街で、誇らしく語りたい。そんな様子でした。