読むめし

口で咀嚼するたけでは足りず、観念でも食べ物を愛でようとする人間

海と太陽と肉と肉

やっと映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』を観てきました。

 
1月にこのブログで「観たい!」と書いたものの、公開2日後の3月1日はなんと終日満員御礼で観られず(日曜日かつ映画の日かつ雨、そしてこの映画は上映館が少ないという要素が重なったからと思われます)、やっと公開から1週間後に観られました。

鉄板の上のバターや食材が間断なく映し出され、飛び交う単語は料理だらけで、ストーリーにはあまり緩急が無く、デブ的にお得な、ある意味新しいムービーでした。
私は観てよかったです。
 
特に気に入ったのは、会話のあちこちに入り込むスペイン語でした。
マイアミからニューオリンズテキサス州を経てロサンゼルスというアメリカ南部の道は、常にラテンの波に洗われています。
 
何と言っても主役はキューバサンドイッチですから、挟む食材やサイドメニューの名称にはスペイン語が多用されています。
(キューバサンドイッチとはサブウェイのような形状のサンドイッチの上下表面にまでしっかりバターを塗り、肉やチーズの具材をたっぷり挟んで鉄板でプレスし、カリッと重厚に仕上げたもののようです。)
 
セルベッサ(ビール)、アロスコンポヨ(チキンライス)、レチョン(豚の丸焼き)等々、日本語の字幕でもそのままカタカナで書かれたり訳を飛ばされたりしているくらいで、解説は特に無いまま進行します。
また作中で何度かスペイン語の会話がありますが、字幕はあまり出ません。ノリで分かるやろといった体で、たしかに分かります。
アメリカ人、特にカリフォルニアや南部の人々にとっては日常に入り込んだスペイン文化がとても多いことを感じさせます。
 
この映画はそのようなラテンのノリを存分に意識して、食べることの楽しさを描き切ったものだと思います。
 
BGMもラテン、しかも登場人物が歌ったり演奏したりしている形で後ろに流れることもしばしばだし、登場する女性は飛びきりイイ女ばかり。フードトラックをビーチのそばに停めればビキニのレディたちも群がります。
 
雇われることから開放されて楽しく生きるというアメリカ人の憧れの姿を描いた、なんてまとめるだけでは物足りず、全身全霊で食事と世界のあちこちに転がっている楽しさを表現する映画でした。