読むめし

口で咀嚼するたけでは足りず、観念でも食べ物を愛でようとする人間

懲りずに北鎌倉

こんにちは。ブログ迷走中です。

今回も鎌倉の話になってしまいました。

鎌倉のイメージの中心となる北鎌倉の禅寺ができたのは、日蓮が鎌倉にいた時代と重なっていることを知りました。

当時の鎌倉、一体どんなことになっていたのでしょう。

五代執権の北条時頼という人が禅宗に深く帰依して、鎌倉五山第1位の建長寺を建てました。

北条時頼は、かなり有能な執権という噂です。
乱を鎮圧し、政敵は潰しちゃう、だけど一方で何かを庇護して敵意が固まらないようにする。

幕府の統治システムを着々と整え、北条氏の支配基盤を強固にする。

辣腕を振るった一方で、信仰心が厚く、禅宗を広めるべくデカいお寺を創建する。

そんな大活躍の時頼ですが、突然31歳で出家します。

なんで出家したかって、明らかではないのですが、病気がちで自分の命は長くないものと思ったので、その後の体制を決めて既存のものにしようとしたのではないでしょうか。

そんなんで着々と事を進めてきたある日、

「狂った坊主が町の中で、政治と宗教の批判をずっとやってるんですけど」

っていうね。

そうです、日蓮の辻説法です。

このとき、最明寺入道こと時頼は、

「ほんと、やめてほしいんだけど・・・」

と思ったんじゃないかなって想像します。

そんで、「正しい仏教と、それに基づいた政治」みたいな書状が日蓮から届きます。

時頼は、出家してから隠密で諸国を見る旅に出るくらい好奇心があったらしいので、きっとその書状は熟読したことでしょう。

それで、しばらくしてから、時頼と日蓮の直接討論が実現します。

この時代にテレビがあったら空前の視聴率だったと思います。

日蓮「為政者の信仰が正しくないから、地震や日照りが起きて民がたくさん死んでいる。今こそ正しい教えに立ち返るべき」

時頼「(いや、地震や日照りの因果関係おかしくない?俺自身はすごい質素な生活して身も心も民衆のために尽くして来たんだけど)」

時頼「私は出家して禅宗を信仰しており、一方、今の将軍さまは真言宗でいらっしゃる。宗教が違ってもお互いに信仰を非難することは無い。それなのにあなた一人が他の宗派を攻撃する。特に、今この国を執りしきっている方の教義を亡国と貶めることこそ大逆ではないか」

日蓮「だからこそ申し上げているのです。亡国の教えを放置しては大変なことになる」

時頼「あなた一人だけの言葉を信じて、この国の全てと、さらに他の国々から伝わっている教えがひっくり返ると思うのですか?」

日蓮「ですから、話し合って真実を伝えようと」

話が平行線になると見た時頼は、討論の席を立ちます。

日蓮「待てぃ!」

最大の実力者に怒鳴る日蓮

周りで聞いていた人々はチビったか漏らしたと思います。

日蓮「命を懸けて真実を申し上げております」

時頼「(もういいよ)」

(両者席を立つ)

・・・これが、鎌倉時代に鎌倉で起きたワンシーンです(想像)。

こうして見ると、老練な保守系政治家と革命を志す若き僧侶の対決のようなイメージですが、なにげに日蓮のほうが5歳上でした。

病気がちながら禅宗に帰依して身体の限界から悟りを得ようとする時頼と、偉丈夫ながら文献に基づいた論理で真理を説く日蓮

静と動。

ビジュアル的にはハゲとハゲ。

鎌倉のお寺を訪ねて、本を読んでWikipediaを読んでまた鎌倉を訪ねるのを繰り返すと、イメージが新しく立ち上がってきます。

ところで時頼はこの討論の後、自らが直接日蓮に罰を与えることはありませんでした。

何か思うところがあったのでしょう。

そんな時頼が隆興させた禅寺が、今の鎌倉観光の目玉となっている、と考えながら巡る北鎌倉です。

建長寺は今日も人々が訪れ
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円覚寺は時頼の息子の時宗が開いて、外国人どんどん来る来る
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建長寺円覚寺の"山"の谷間にひっそり佇むのが明月院(あじさい寺)、時頼が息を引き取った付近の跡地に建てられたお寺です。
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時頼と日蓮が討論した場所は、鎌倉の町の中にあり、今や住宅地です。
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日蓮の辻説法の場所は、幕府跡に比べてしっかり残されていました。

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ざっくり歩き回り、小説を読み、Wikipediaを読み、また歩くのを何度か繰り返すと、
「ここがそれか」
「そういうことだったのか」
と、現地でも本の中でもネット上でもちょいちょい気がつくことがあったのでした。

あ、本日のおみやは日蓮の辻説法跡から徒歩で5分くらい、鎌倉の農協連即売所・通称"レンバイ"の中にあるパン屋さんのあんぱんです。
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なんと、あんこの中にクランベリーが入っており、モダンに美味しくなっています。

様々なおかげさまで美味しいものが食べられます。