読むめし

口で咀嚼するたけでは足りず、観念でも食べ物を愛でようとする人間

萩の宿。ひねもすのたりしたかった。

前回の記事で、
「萩の街は質素。そこで生まれ育った松蔭先生はあらゆる贅沢を投げ打って日本のために奔走した」
みたいなことを書いておいて矛盾するのですが、今回は萩で泊まったリッチな宿について書きます。
知人のクーポン券で、高いお宿がお値引きよ。

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なんかこう、エントランスの隣に謎の贅沢空間あり。

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あっ、いかん、知る人ぞ知る私の500円リュックが写り込んでいる。

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お部屋に内風呂ですよ。風呂桶はヒノキで、お風呂の床がなぜか畳なのです。戸惑いつつ贅沢を踏みしめました。

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窓の外には河口と写真のやや左手に小高い山が見えます。
あの山が、江戸時代に山口県一帯に君臨し、開国に至って明治維新の志士たちを育んだ、毛利家の居城だった指月(しづき)山なんですって。
その向こうは日本海です。
海に面した街が、大国の脅威を鋭く感じさせたのだろうと、お城の門番のおじさんが言っていました。
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部屋には、たぶん萩焼の壺と、花と絵よ。

さて、夕食でございます。

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小鰯の天ぷらや、鯛のすり身を重ねたやつ、あと5月らしくちまきなど、和食のオードブルも心が浮き立ちます。
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ハマチ、鯛、イカ、マグロのお造り。
そりゃあもう、白身魚の歯ごたえと、マグロの脂身の幸せです。
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そして、フグ刺しです。
薄さを表現するためなのか、鮮やかな絵柄のお皿に盛り付けられることが多いですね。
あっさりした味ながら弾力があり、細ネギを巻いて柑橘系果実の入ったポン酢につけていただきます。
この、締まった身の白身魚と柑橘系の組み合わせはとても美味しくて、瀬戸内地方ではどちらも名物ですが、どうやってそんな絶妙な組み合わせに至ったのでしょうね。
いまだ追っているテーマです。

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それから地物の和牛ステーキを、自席でミディアムレアに焼いていただきます。
そりゃあ美味しいでしょうよ。無限の酒がほしかった。
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それから、ミニトマトのサラダや野菜の炊き合わせを経て、アナゴの柳川風です。
軽く火を通した玉子とじに、野菜と柔らかいアナゴ、落ち着きます。

この後には揚げ餅の葛あんかけ、そしてお新香や薬味とともに食べ放題のご飯+お茶漬けと続きました。えらいこっちゃ。

満腹のまま一日中宿でゴロゴロするのも良いのですが、やっぱり歩き回ってしまう。
旅のジレンマです。

こんな贅沢してしまって、松蔭先生に申し訳ないのも萩のジレンマです。

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上の写真は松蔭先生が下田で外国船を見すえたところ。弟子の金子君と一緒です。
並々ならぬ決意が漲るシーンです。

このような人々に救われて支えられて、今日の日本と美味しいご飯があるんだなあ。
それがこの地のご飯のいただき方かもしれません。