読むめし

口で咀嚼するたけでは足りず、観念でも食べ物を愛でようとする人間

日本酒入門の本を読みながら飲んだら美味しかった。からの、突然検定

飲めるようのなったのが嬉しくて、早速『白熱日本酒教室』という入門書を読んでみたところ、非常に分かりやすくて読みやすく、3時間ほどで一気に読んでしまいました。

白熱日本酒教室 (星海社新書)

※日本酒の話が続いて恐れ入りますが、本日も日本酒の話でございます。

 

この本は、日本酒を飲み始めたばかりの人や、なんとなく飲んでいるけど実は体系や用語が明確に分からないという人に向けたものと思われます。

著者も別に、酒蔵の人でも大学の権威でもなく、日本酒好きが高じて活動している人なので、同じ目線の高さから語ってくれています。

出だしで

世界のお酒の中で見ても日本酒はいま歴史上もっともおいしく、多彩で、面白いお酒になっている

と宣言していて、うむ、日本酒が大好きな人から見たらそうであろう、好きなのだから客観的にどうのということは言うまい、話を聞こうじゃないか、という姿勢になります。

アニメやラーメンが海外進出している昨今、日本酒だって黙っているハズがない、世界各地に打って出るさ、ということで

スペイン料理に合わせる日本酒」「チーズによく合うお酒」「ナッツとよく合うお酒」など、さまざまなタイプの日本酒が登場している

のだそうです。

こういうことを言われると、ビールとワインばかりだった人間の食指も動くというものです。

内容は、製法の違い、お米の違い、ラベルの読み方、多彩な飲み方、そして日本酒との出会い方など、入口として欲しい情報を網羅しています。

何より素敵だったのは、この本を読みながら日本酒を飲むと実に身体に染みわたるように美味しかったことです。

 

さて、たまたま、この本を読んだ直後に近所のスーパーをうろついていたら日本酒の試飲コーナーがありました。

数本の瓶と小さな試飲用のカップがあり、誰もいなかったので調子に乗ってお酒を注ごうとしたところ、「あらら、お客さんに注がせちゃってすみません」と、ハッピを着たおじさんが戻って来たのでした。

 

「こちらお飲みになりますか?これは1月に搾ったばかりの生酒になります」

「あっ、はい、これはかなりガツンと来ますね」

と相槌を打つ流れになりました。

「では次のこれは、搾ってからしばらく経ちますが生詰酒です(たしかそうだったはず)」

「ああ、先ほどのを先に飲んだから薄く感じますが、普通のよりは比べるとしっかり濃いほうですね」

「お客さん、普段からよほどお好きで飲んでいらっしゃいますね」

「あっ、はい」

と、肯定しなくてもいい所で適当に頷いてしまいました。

いきなり読んだ本の知識を試される検定の場に飛び込んだのでした。

 

「その次が火入れをした吟醸。生に比べると落ち着いていてスッキリしているでしょう」

「ですね」

「うちは愛知の蔵元でして、あの辺の食べ物はどちらかというとコッテリ濃い口でしょう。味噌カツとか」

「そうそう、味噌煮込みうどんとか」

「だからあんまりスッキリしてしまうとお酒の存在感が無くなってしまうんです」

「わかりますわかります」

(読んだ本にもざっくりと地方の味の特色が書いてあったぞ・・・!)

(という調子で6種類ほど味見してしまいました。)

 

「お客さんが今お持ちのものは、何ですか、納豆?」

「いいえ、これはシジミの佃煮です」

「それなら最後に飲んだ本醸造のやつが合いそうですね。一番安いけど、甘辛の濃い味に負けず熱燗にも向いていて芳醇になるので」

「私もそう思います」

と、ガッツリ本の内容をおさらいしてから、本当にお財布の中身が足りなくて何も買わずにお礼だけ言って立ち去ってしまいました。本当に申し訳ございません。

頂いたお酒はそれぞれ美味しかったので、今度出逢ったら購入いたします。

愛知の山のほうの蔵元ということで、周囲では圧倒的に有名な酒蔵だったのかもしれません。それさえ知らずに「まあ普段からよく飲んでます」なんて嘯かなければよかった・・・

 

それにしても、目を向けなければ「昔の世界」として意識しなかった日本酒界隈が今とても活気にあふれていて、比較的若い人が本を書き、前線で酒を売るおじさんが活き活きしていて世界にもアグレッシブに進出しようとしているとは、思いもしませんでした。

旅するように、しかし飲み過ぎないように、日本酒を追って行きたいものです。