読むめし

口で咀嚼するたけでは足りず、観念でも食べ物を愛でようとする人間

大岡川を野毛から弘明寺まで。桜を待ちわびて

東京で桜が咲かないなら、横浜でも咲かないのです。

2017年3月25日(土)、横浜の桜の名所の一つである大岡川を散歩がてら見に行った結果を報告いたします。

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ほぼ蕾です。

蕾99.5%でした。
すなわち開花率0.5%、5厘咲きでございます。

一方、地元の方々にはおなじみの大岡川の桜の風景、ザ・露天ですが、3月25日(土)11時現在、着々と準備が進んでいました。
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雰囲気から言うと、今日さっそく始める勢いのお店が多かったです。

まだ食べ物は全く置いていないのですが、露天を横目で見ながら進むうちに食べたくなります。

タコ焼き、鶏ステーキ、しゃがバタ、牛串・・・まだ見ぬ賑わいに心もしくは胃袋が踊ります。

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僅かに咲いている桜をアップにして写真を撮る人の心情をお察しください。

いや私よりも切実に開花を心待ちにしているのは、露天の人々でしょう。

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あともうちょっと、ポフッと蕾が開けば開くんですけどね。

一様に蕾のまま、野毛からスタートした大岡川散歩はあっさりと弘明寺に到達しました。

弘明寺は桜並木のほぼ終端です。

終端にはしっかり、弘明寺公園という名所が配置されています。
もちろんここの桜も咲いていません。

蕾だけの桜の樹の下で、青いビニールシートを敷いて震えながら宴席を張っている若者の集団がありました。

「さささ寒みいー」
「中止?ねえ今日中止?」

そんな集団を尻目に展望台へ。

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さすが弘明寺公園、いきなり標高が高い、しかし視界が茶色い。

しかし「ランドマークタワー」とはよく命名したもので、横浜界隈の多くの展望台から見えます。

弘明寺の商店街の、公園とは逆のエンドには学校があり、そこそこ桜があります。
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ここの桜が、この日一番の開花率でした。しかし1分咲きくらいかな。
立ち止まって観る人は、私以外にいませんでした。

弘明寺商店街の中華料理屋でなんとなく焼きビーフンを買って帰路へつきます。

1パック200円と書いていたのに
「220円になります」
「え?200円ですよね?」
「消費税を入れて」
「え?」
「216円ですが、中途半端なので」
「え??」

面倒臭かったのでそのまま220円払ってしまいましたが、210円に値切るかレシートを要求するべきでした。
要注意の中華屋があることだけ書いておきます。
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復路は川をたどらずに県道を走り、みなとみらいへ。

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横浜美術館の横、遠目に見ると桜によく似ているモクレンが、このときばかりは写真に撮られています。

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何年もこうして観光地に咲き、「なんだ違うの?」と言われている、モクレンです。
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これが「木蓮の涙」(ちがいます)。

そんな、桜を待つ人々を見ながら、桜を待つ私の散歩でした。

横浜の坂たち

なんと2月に一度も更新しておりませんでした。

というか、2ヶ月ほど記事を書いておりませんでした。

その間、冬に撮りためた横浜の普通の住宅風景を公開いたします。
もう春がほとんど来てしまいましたね。

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家の一つひとつにどんな人が住んでいて、窓からどういう景色が見えるのかなあと、想像しながら散歩します。
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しかし、「見て見て、すごい坂!」と紹介したくても、坂の写真って難しいんですよね。

写真の中で傾斜を表現するのは、一筋縄では行かないようです。

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輪っかが付いている道路だと、それなりの角度があるのだろうと想像してもらえるのでしょうけどね。

しかし飽くなき挑戦は続きます。

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左右の段差で傾斜を感じさせたりですね。
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こちらの写真では、屏風のような崖の下に家々があります。
もしかしたら古代には要塞だったかもしれない勢いです。

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さて一休み・・・ここは、横浜市の仏向町というところにある水道記念館です。
なみなみと波打つ横浜の坂のただ中にあります。

私のお気に入りの場所の一つです。

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水道記念館の庭から、遥かにみなとみらい地区が見えます。

ここの建物に展示されている横浜市の水道の歴史は、とても分かりやすい語り口です。

横浜市はこの急峻な坂の連続ゆえに、水道技術が導入される前は、各家庭で水を使うにはかなりの労働力が必要だったのです。

ひしゃく1杯の水が現代のお金で200円くらいだったとか・・・うろ覚えですが、ペットボトルの水よりも高価だったと思います。

それが、蛇口をひねればきれいな水が出てくる生活に変わったなんて、どれだけ革命的な変化だったことでしょう。

しかも、横浜市に流れ込む水道の源流は、富士山麓から来ているそうです。
忍野八海(おしのはっかい)といって、行ったことのある人はご存知だと思いますが、青く透き通った湧き水から来ているのよ?

はるばる水桶を担ぎ、ときには伝染病に悩まされる生活から、富士山麓ミネラル水をワンタッチでゲットできる生活へ。
見事に水道のありがたみが分かる展示があります。

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上の写真は、水道記念館の前庭です。
ヨーロピアンなたたずまいの噴水は、きっとヨーロッパから技術を取り入れた余韻かもしれません。

尚、同じ敷地内の別の建屋にある水道技術展示棟の解説は、記念館とは対照的にマニアックで私にはほとんど理解できませんでした。それもまた良い。

そんな横浜の坂と水道に思いを馳せながらの散歩ということで、今回はこれにて一旦区切ります。

まだまだ坂道と住宅写真があるのよ。どうしましょう。

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写真右上の日本酒は、神奈川の地酒「大山」です。辛口ながら穀物のまろやかさがあり、けっこうお気に入りです。
これはこれで神奈川の水の恵みですね。

今半のすき焼き弁当を頂いてしまったのよ

思いもかけない所からゴージャスなやつが舞い込んできました。

 
今半のすき焼き折詰弁当を、勤務先からいただきました。
偉い人を迎えての会議室ランチで、1名欠席が出たようでした。
 
別に私にくれた訳ではないのですが、周辺で
「食べ物ならねぎさんでしょ」
と囁かれていて、
「え?何か知らないけど他の人が食べられないならもらっちゃうよ?」
で、開けてびっくりという訳です。
 
キュービックで煌びやかな箱にお弁当が入っているなんて、遠目には分かりませんでした。
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金色の紐を外すと説明が入っていました。

 
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ご飯の段に、カニとウニとイクラ乗ってる。
ゴマに梅干ではないんです。
メインの海産物の他に、黒豆や蕪の漬物なども上品なお味で乗っていらっしゃいます。
これだけで既に一食ぶん800円ぐらいで完結できそうです。
 
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中段は主役のすき焼きが全面的に支配しています。
黒毛和牛、しらたき、ねぎ、椎茸、豆腐と人参といったスタンダードな顔ぶれが、しっかり甘辛な味で程よく重なり合っています。
 
黒毛和牛、そりゃあ文句なしの牛です。
柔らかくて、スジや脂の固まった部分は無く、臭みもなくて存分に牛の風味がします。
同じ段に入っている温泉卵がこれまた絶妙な固さで、カラザもなく生茹でエリアもなく、隅まで安心して舐められます。
何より、卵の風味が濃くて、しらたきにも豆腐にも肉にも絡んでくれる充実感、これがすき焼き弁当の醍醐味です。
 
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上段なんかもうエグゼクティブのパーティールーム状態です。
 
おカシラ付きの海老天の、衣にウニが混ざっているんですって。
ゴージャス姉妹が毛皮を纏って夜会にご到着といったところでしょうか。
 
ローストビーフ軍艦も同じルームにいらっしゃいます。
すき焼きの和牛があるにもかかわらず、ウニカニご飯があるにもかかわらず、ダメ押しの肉と米で攻めます。
 
あん肝ポン酢もソファに鎮座しています。爽やかなレモンの座布団付きです。
 
鰆の西京焼きは、ほどよく柔らかくて、お上品かと思いきや味はしっかり目で、味噌の甘みと芳醇な風味が膨らみます。
 
などなど、まだあるけれど書き切れません。
 
アタクシお行儀が悪いのですが、食べながらネットで値段を調べちゃいましたよね。
2,500円でした。イェイ
 
この内容にしてはお得だと思います。
 
家でまったり、盃をちびちび傾けながらゴージャスなジャパネスクの夢にたゆたう時間もアリです。
 
でも会議室ではもったいないなあ。
 

江戸の食いしん坊日記

大晦日にふと手にした本を、寝転びながら読みました。

 
『幕末単身赴任 下級武士の食日記』
幕末単身赴任 下級武士の食日記 (生活人新書)

幕末単身赴任 下級武士の食日記 (生活人新書)

 

 

内容はタイトルの通りで、妻も子供も故郷に置いて、お手伝いさんも無し、江戸の長屋で自炊生活の武士の日記から、当時の食事を垣間見ます。
 
一冊を一日で一気に読んでしまいました。
どうにもこの日記の筆者、本当に酒と食べ物が大好きなようで、自分に似ていると思ったのです。
 
一人で自炊してもお酒を飲んじゃうの、江戸の武士でもアリだったんですね。
 
自炊のベースは豆腐料理だったようで、茹でたり焼いたり混ぜたりと、現代と同じかもしれません。豆腐おそるべし。
 
ちなみに、このブログでも紹介したか忘れましたが、江戸の料理本のベストセラー『豆腐百珍』というのもあるんですよね。

 

豆腐百珍 (教育社新書―原本現代訳)

豆腐百珍 (教育社新書―原本現代訳)

 

 

肉と魚は、なんらかのイベントが発生したときや頂き物、あとは酔っ払ってタガが外れたっぽいときに購入するようです。
 
この日記の筆者、グルメ散歩でハズレの店に入ると、帰りに塩鯖を買って自宅で口直ししちゃいます。
とにかく何か食べたいの、わかる。
 
ちなみに江戸のファストフードの筆頭は蕎麦です。次いで寿司もポピュラーだったようですね。
 
風邪をひいたら、治療の言い訳で豚鍋を作り、酒を三合も飲んでいます。
鼻水が出てダルいけど、食欲だけはあるから栄養摂取として普段より多く食べるし、酒は百薬の長と言いますし。
 
風邪なのにたくさん食べるから、周りには具合悪いと思われないんですよね。わかるわかる。
 
宴席があれば日本酒4合はイケて、帰りに「お土産」としてまたうなぎとか買っちゃうの。
 
存分に酔っ払って気分が良くなって、歌って怒られるまでがセットです。
いかん、つい最近の忘年会を思い出す・・・
 
 
この本を読むと、同時代で世界屈指の大都市と言われた江戸は、参勤交代で集まった殿様やその従者やそのお世話をする人々でひしめき、そのために商売もできて、おかげで文化や情報が集まってできた人工的な文化都市なのだと感じられます。
 
 
それにしても、正月三日目にして、お餅が食べたくなってきました。
かの日記の筆者、お餅も大好きで、故郷の紀州から江戸へ上る道中に宿場町や茶屋で様々な名物の餅を食べています。
「あんころ餅を四つ食べた」
とか、微笑ましいじゃありませんか。四つも食べたのかよというツッコミもあるけど。
 
お正月に丁度良い読書でした。

青い風 切って走れ 江ノ島へ

 

2014年1月1日は箱根駅伝コースを戸塚から小田原まで、

2015年1月1日は北関東で徳川家ゆかりの都市めぐりとして小山、結城、渡良瀬遊水池を経て古河、
 
と自分で企画して孤独なランを実行しました。
 
では今年はどうしようかと直前2日ぐらいで検討し、
 
  • 年末年始は晴天が続く予報なので、トレイルを歩くチャンスである。トレイルは、当日が晴天でも前日が雨だとぬかるんだり通行止になる場所がある。
  • 全方位的に運動不足なので、できるだけ多くの筋肉を使いたい。そのためには平地より山道が良い。
  • 元日から山道を歩く人はそんなにいないと思われる。
  • 横浜に引越したので、南へ行きましょうよ。
 
などの理由から、鎌倉トレッキングに決定いたしました。
 
金沢市民の森
→鎌倉天園
→源氏山公園
→大仏ハイキングコース
江ノ電沿いすなわち海岸沿いに
江ノ島
 
となります。
 
いやあ、トレイルというかハイキングコースだけでも存分に気持ち良いのだけれど、山の隘路を抜けて青く光る海に出て、最終目的地が江ノ島とか、どんだけ勝手にシンドバッドなのかと。
 
今年は忍耐の年、できるだけ落ち込む角度を浅くする年、どこかで見切りを付けることが必要になる・・・という暗い気持ちを引き剥がす、アゲアゲのコースじゃないですか。
 
市民の森から天園(ハイキングコースにある要衝。ちょっとしたお酒や肴もいただける)を経て鎌倉の人里に出たときなんて、安心感どころかドバッと人がいますからね。シンドバッドだけに
 
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鶴岡八幡宮とその堂々たる参道は、直進できないほどの人出でした。
 
八幡宮までのトレイルは、予想したよりも人出がありました。
5,60人は追い越しました。
 
あ、わたくし、ガチのトレランと思われないように、ストレッチのジーンズとパーカーにリュック姿で早歩きしました。
 
無理に追い越さず、広い通路や相手が気がついたときだけ声をかけて追い越させていただきました。
 
そういう意味では年の始めから何十人と会話しました。
 
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それから、久しぶりに会えたよタイワンリス君。
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そして江ノ島は、鶴岡八幡宮以上の人口密度でした。
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江ノ島からの元日の富士山、見事です。
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江ノ島に上陸した途端に魚介類の焼ける香ばしい磯の匂いがします。
 
初めて、店頭で焼いている畳鰯を買ってみました。
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1枚350円で、稚魚と青海苔をシート状にプレスしたものを香ばしく焼いています。
 
食べたら、江ノ島に上陸したときの磯の匂いと同じものがさらに凝縮した風味でした。
 
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意味もなく光に透かしてみた。
 
そんなこんなで、今年もよろしくお願いいたします。